感想

暗黒大陸の悪霊 (文春文庫)

暗黒大陸の悪霊 (文春文庫)

警官殺しが続発する中、カナダ騎馬警察巡査長クレイヴンの母親が惨殺された。唯一の物証が示す犯人はクレイヴン。彼自身の出生にまつわる暗い秘密とは?
そして暗黒大陸の悪霊に操られる殺人者「邪眼鬼」はだれか?
犯人探しは最後の一行まで転げ込む。
ミステリ魂増量、鬼才スレイドが再び放つ狂気の大作。

マイケル・スレイドよ、やればできるじゃないか!!
と、絶賛したくなる「最後の一撃(フィニッシュ・ストローク)」。最後の最後で、なるほどそう言えば・・・とうならされてしまします。私も見事に最後の最後で騙されました。


さて、あいかわらずの破天荒なストーリー展開であります。のっけから、警官が「髑髏警察」(いってみれば骨ほねロック)に見えてしまう精神異常のギュンター・シュレックという、ネオナチが登場してみたり、本格的なリーガルサスペンス調になってみたり、アフリカのジャングルで大立ち回りをしてみたり、タイタニックばりの客船沈没をやらかしてみたり、スケープゴートな役だったはずのギュンター・シュレックが物凄いカーチェイスを繰り広げてみたり・・・。
脈略もなにもあったものではありませんが、このめまぐるしい展開のなかに「最後の一撃」で驚かされる伏線も張ってあったり。まぁ、「最後の一撃」にたどり着くまでの750ページが長いと感じるかどうかはさておき・・・。
そんなスレイドの特徴を残しているわりに、殺害の描写がいつもより地味というかあっさりしすぎというか・・・。なんとなく過去の作品からスレイドのイメージが「パンクホラー」になっていたので、意外といえば意外だったかもしれません。
前作「髑髏島の惨劇」でもありましたが、主要なキャラクターをいともあっさりと殺してしまうのは健在だったりしますが。


この「暗黒大陸の悪霊」は前作「髑髏島の惨劇」を読んでから読まないと、登場人物の相関関係が前作以上につかみ難いので、注意が必要です。


「ヘッドハンター」「グール」「カットスロート」「髑髏島の惨劇」「暗黒大陸の悪霊」からなるカナダ騎馬警察スペシャルXの大河ドラマの後半から読んでしまったので、俄然、前半を読みたくなる作品であることは間違いありません。