感想

その女性の惨殺死体には、首がなかった。またしても犠牲者が出たのだ。それにしても、犯人はなぜ首を斬って持ち去るのか。やがてある日、新聞社に数枚の写真が送りつけられてきた。そこに写っていたのは、杭に突き刺された被害者の頭部だった!
連続殺人鬼<ヘッドハンター>の挑戦状に、色めきたつカナダ騎馬警察特捜本部。いまやヴァンクーヴァ―の街はパニック寸前だ。本部長ディクラーク警視の焦燥は深まるばかりだったが・・・

マイケル・スレイドのカナダ騎馬警察スペシャルXシリーズ第一弾。
この作品では、まだスペシャルXは組織されていないが、ディクラーク警視を主人公に置いたシリーズの幕開けである。

全編通して、ぎこちなさはあるものの、スレイドの放つパンクな雰囲気は十分に伝わってくる。
ホラーに分類されることが多いスレイドの作品だが、「ヘッドハンター」はサイコサスペンスに終始している。
犯人の心理的葛藤や、追い詰められていくディクラークの苦悩。ただ、犯人の心理に直接的に対峙する捜査側のキャラクターがいた方が、サイコサスペンスとして上手くまとまったと思うのだが。
ただ、クライマックスの銃撃戦の緊張感やフィニッシュストロークは抜群に効いているので、後半の読み応えは満足できる。
暗黒大陸の悪霊」でのフィニッシュストロークも素晴らしい落し方だったし、この「ヘッドハンター」では犯人自体の意外性は少ないものの、最後の一撃はかなり驚かされた。


途中に描かれているブゥードゥー教の儀式や薀蓄、それに重要なキャラクターを簡単に殺してしまうと言った、スレイドの作品の特徴がしっかりと形成されているデビュー作である。


マイケル・スレイドは複数作家(正確には弁護士)の合作のペンネームである。
手探り状態のデビュー作なためか、若干構成のぎこちなさを感じる。
「髑髏島の惨劇」や「暗黒大陸の悪霊」ではそのあたりの課題をクリアされている。