感想

夜の闇を待ちながら (講談社文庫)

夜の闇を待ちながら (講談社文庫)

時は1921年イングランドの美しい田園で起きた猟奇殺人事件。領主屋敷で発見された四つの死体は、銃剣とおぼしき凶器で刺し殺されていた。
スコットランドヤードのマッデン警部補が地道な捜査で犯人を追う。
心理分析など、まだ存在しなかった時代のサイコ・スリラー。

序盤の一家惨殺事件で引き込みに成功し、中盤は警察小説さながらの捜査中心に話がすすみ、期待をかけていたのですが、終盤少し失速。ラストは予想通りの展開で、一気に凡作に成り下がってしまった感じがします。


サイコ・サスペンスで犯人の心理を追求していくのは、最大の読みどころなのですが、この作品はどうも犯人の心理面が最後の最後まで見えてこない。
結局すべてが解き明かされるのは、事件が解決した後なので、物語り中のスリリング感が削がれてしまっています。
戦争といった上等の題材を扱いながら、素材を使いきれていない感じが残念です。主役を張っているマッデン警部補も戦争で心を病んでいる設定なのに・・・。警察小説にするのか、サイコ・サスペンスにするのか、煮え切らなかったことがマイナス点でしょう。


ただ、第一次世界大戦後のイングランドの田園風景が良く書かれていて、のどかさを垣間見せているのは、プラス点です。
当時の雰囲気を堪能できますよ。