■【読書】
2015年1月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3700ページ
ナイス数:180ナイス

悪魔に食われろ青尾蠅 (創元推理文庫)悪魔に食われろ青尾蠅 (創元推理文庫)感想
再読。本作の特徴は衝撃的なラストよりも、幻想的な文体にあると思う。儚げでかつ不安で自身なさ気、しかしその中で絶対的に主張している強い意志のようなもの。現在進行形の現実と回想と妄想から織りなされる、狂気と凶気。読者はそんな文章と主人公エレンに翻弄されて、エレンの心の中の闇に捕らわれで迷わされる。エレンへの感情移入とも違うし、エレンの視点とも違うし、なんとも不思議な感覚の読書体験ができるので、是非読んで欲しい傑作である。
読了日:1月30日 著者:ジョン・フランクリン・バーディン
モノグラム殺人事件 (〈名探偵ポアロ〉シリーズ)モノグラム殺人事件 (〈名探偵ポアロ〉シリーズ)感想
ポアロの正統続編というこで期待する人も多いと思うが、ポアロという名ではあるものの、クリスティのポアロものと全く別物として読み事をお薦めする。ミステリとしては容疑者が嘘をついていることが前提条件となっている推理なので説得力が薄く、深層の裏付けも弱いから、脆弱さを拭い切れない。また、人物の相関関係についても必要以上に複雑にしているせいか、全体像をつかむのに苦労する。殺人のプロットは面白いものはあるので、ポアロ正統続編という足かせを外して、作者オリジナルのミステリに仕上げた方が成功していたのではなかろうか。
読了日:1月28日 著者:ソフィーハナ
白の迷路 (集英社文庫)白の迷路 (集英社文庫)感想
正直驚いた。前2作と全く様相が違う。まさに、北欧ノワールへと昇華を遂げている。フィンランドにおける人種差別と政治腐敗を中心に、カリ・ヴァーラを始めレギュラーキャラクターが闇の世界に翻弄されていく。前2作では「正義」を全面に押し立てて、凄惨な事件の解決に努めているが、本作は「正義」の名だけでは処理しきれない何かが蠢いている。表面上の「正義」を貫けば、深層的な「腐敗」を助けることになり、「腐敗」を除去しようとすれば、「正義」が成り立たない。暴力と麻薬と政治、どこか60年台〜70年台のアメリカを見ているようだ。
読了日:1月25日 著者:ジェイムズトンプソン
凍氷 (集英社文庫)凍氷 (集英社文庫)感想
性的描写がストレートなのと、前作同様暴力的かつビジュアル的な殺人と死体表現で、クライム要素を醸し出している。だけど、カリの内面を書けば書くほど、暗さや重さが減っていくような気がする。本作で取り上げた、フィンランド第二次世界大戦下の闇や政治的有力者を取り巻く性と金の堕落がメッセージとして伝わりにくくなっていて、深層の悪が柔らかくなった印象へ繋がってしまう。ただ、カリのアウトローな部分がよく伝わってくるので、読者は彼に感情移入ができて読みやすいのだと思う。事件だけではなくカリに振りかかる災難は続く。
読了日:1月22日 著者:ジェイムズ・トンプソン
極夜 カーモス (集英社文庫)極夜 カーモス (集英社文庫)感想
風景も殺人も死体も描写がとてもビジュアル的なのが特徴か。ミステリとしては、解決部分が唐突すぎるきらいがある。もう少し丁寧に証拠提示か理詰めで解決して欲しかった。ノワールとして評価が高いようだが、フィンランドにおける人種差別や宗教の深部のえぐり方が浅く、事件に絡めた程度なので、本当の闇の部分が見えてこない。全体に潜む暴力的なノワール要素は書けているが、事件の裏に潜む社会のアンタッチャブルなダークさや人物の心理描写が書けてくるとノワールとして完成されてくるのだろう。とても荒削りだが、今後を期待させてくれる。
読了日:1月19日 著者:ジェイムズ・トンプソン
死の翌朝 (論創海外ミステリ)死の翌朝 (論創海外ミステリ)感想
これがナイジェル・ストレンジウェイズの最後の長編。今まで未訳で残っていたのが不思議なくらい。往年のキレは陰を潜ませてしまった印象。舞台は60年台のアメリカ。ナイジェルはずっとイギリスで活躍していたので、この設定自体はとても新鮮だった。事件解決までにここまでもたつくとは思っても見なかった。トリックらしいトリックもなく、登場人物も少ないし、わりとわかりやすい犯人にもかかわらずだ。作者は当時のアメリカを風刺するわけでもなく、何か物足りなさが読後に残る。ナイジェルの最後なので、もっと華々しくして欲しかったなぁ。
読了日:1月16日 著者:ニコラスブレイク
狼の王子 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)狼の王子 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)感想
ミステリというよりも、ダークファンタジーを読んだ読後感。叔母と姪2人が殺し合いをした結果の死体が発見されるシーンから始まる。姪2人が書いた日記に、叔母を殺すに至るまでの経過がしるされている。姉の書いた日記には狼の化身となる王子の寓話があるのだが、これが意外にも面白い。話の本筋よりも面白いのだ。ただしその寓話が大きく事件に絡んで来ないので、途中はかなり思わせぶり。姪2人の書いた日記が終わって、日記を読んだ郵便配達員が冒険する、わずか50ページ弱の章がその狼の寓話とシンクロしていて記憶に残った。邦題が見事。
読了日:1月14日 著者:クリスチャンモルク
凍える街 (創元推理文庫)凍える街 (創元推理文庫)感想
ハンネ・ヴィルヘルムセンシリーズの第7弾。ハンネのメロドラマ部分が多数を占めてしまい、事件の捜査や謎解きなどが軽視されてしまっている印象を受けた。開幕すぐに4人の惨殺死体が発見され、ハンネ以下おなじみのメンバーが現場に集結するが、何故か事件よりもお互いの身の上に意識が集中していて、緊張感が薄らいでしまう。クリスマス前だし、容疑者もある程度わかっているから初動捜査は重要視しなくても良い雰囲気が漂っているし。事件に対しして頑張っているのは警察学校の生徒だけに見えるのは、レギュラーキャラへの皮肉にも感じる。
読了日:1月10日 著者:アンネ・ホルト
レイナムパーヴァの災厄 (論創海外ミステリ)レイナムパーヴァの災厄 (論創海外ミステリ)感想
序盤の3角関係を元にした殺人と中盤以降の殺人事件とが分断されてしまっていて、折角の種火を消してしまった印象を受ける。また、最後のトリック一発に的を絞ったためなのか、殺人事件に対する捜査や推理が全く生かされておらず、ストーリーに纏まりを欠いているように感じてしまう。とは言うものの、最後の最後に読みどころが来るので、あっと驚かされるのが良い読者。『或る豪邸主の死』といい、本作といい、なぜにコンニトンは翻訳される作品のチョイスに恵まれないのだろう。『九つの鍵』とかもっと読まれるべき作品があるのに、勿体ない。
読了日:1月6日 著者:J.J.コニントン
岡田鯱彦探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)岡田鯱彦探偵小説選〈2〉 (論創ミステリ叢書)
読了日:1月3日 著者:岡田鯱彦

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