2015年3月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2428ページ
ナイス数:150ナイス

魔女遊戯 (集英社文庫)魔女遊戯 (集英社文庫)感想
魔女狩りを研究テーマに掲げたドイツからの留学生が、目を繰り抜かれた衝撃的な死体で発見される。テーマは暗いが主人公の女性弁護士と元警官の遺族の秘書が、なかなか明るい性格で事件の陰湿さを薄めている。この二人、意外といいコンビで、掛け合いが楽しい。怪しげな人物を多く配置していて、捜査部分は読み応えはあるが、スピード感がない上に、魔女狩りに関する蘊蓄が深くないこともあり、作品の方向性としては中途半端な印象。個人的には、サスペンス性を排除してでも、もっと『ナインスゲート』のように薀蓄を掘り下げて言って欲しかった。
読了日:3月31日 著者:イルサシグルザルドッティル
仮面舞踏会 (創元推理文庫)仮面舞踏会 (創元推理文庫)感想
1920年代のヨーロッパにおける社会情勢を事件に絡めたのはいいのだが、ミステリ小説として料理しきれずに終わってしまった印象。ユーモアを前面に出しているわけでもなく、トリックや謎解きを中心とした本格要素が強いわけでもなく、作者がプロットを持て余してしまった。ヘミングウェイピカソなど実在の人物と、ミステリの女王を彷彿とさせる人物を登場させることに拠り所を置かざるを得ない小説になってしまったので、間延びしてしまった感じ。いっそ、前作同様フーディーニを探偵役に据えたミステリにした方が良かったのかも知れない。
読了日:3月25日 著者:ウォルター・サタスウェイト
名探偵登場 (創元推理文庫)名探偵登場 (創元推理文庫)感想
フーディーニとコナン・ドイルのある意味鉄板の組み合わせなんだけど、コナン・ドイルの活躍の場はほとんどない。貴族の屋敷、交霊会、幽霊、密室とくれば、巨匠カーを想像する。トリックの突拍子のなさもカーばりで、なかなか楽しめた。序盤の人物相関や主人公達のまわりで起きる怪事件や密室殺人など、本格のテイストを全面に押し出していて、第2部の終わりまでは本格ミステリとして読ませる。第3部から登場したロンドンの敏腕刑事との推理対決から事件解決編は、破茶滅茶な展開へ。結末で本格ミステリとしては腰砕けだけど、楽しいミステリ。
読了日:3月19日 著者:ウォルターサタスウェイト
グレイストーンズ屋敷殺人事件 (論創海外ミステリ)グレイストーンズ屋敷殺人事件 (論創海外ミステリ)感想
しつこいくらいに5分間に起きた殺人の可否とアリバイが書かれていて、最後まで冗長的だなぁと思っていたら、作者仕掛けた罠だった。このしつこさに目を背けたくなるのだが、背けた時点で読者の負け。少数の容疑者をアリバイを元に丹念に排除すべき人物と残すべき人物とを選り分け、最後まで残った容疑者も枠の外へ追いやらなければならなくなった時に、それまでに丁寧に張られていた伏線が効力を発揮しだすのだ。作者が書いたミステリとしては7作目にあたるようだが、セイヤーズが認めた実力派としてグッと説得力を増した作品に仕上がっている。
読了日:3月15日 著者:ジョージェットヘイヤー
七人目の陪審員 (論創海外ミステリ)七人目の陪審員 (論創海外ミステリ)感想
いろいろ書くとネタバレになるので、感想が難しい。ぶっちゃけ「法廷ミステリ」の体はなしているはいるが、純粋な「法廷ミステリ」ではなく、どちらかというと「ユーモアミステリ」の部類に入るのではないだろうか。 主人公が持つ事件に対しての「恐怖」と、自分達の思い通りに事が運ばなくなることで生まれる群衆の「恐怖」が、主人公の心情を中心に書かれていて良いサスペンスに仕上がっている。どこか、フランス革命時に国王を始めとした主要な国のトップの首が刎ねられるのを見て、民衆が盛り上がっていくフランスの残虐性と同じものを感じた。
読了日:3月11日 著者:フランシスディドロ
紺碧海岸のメグレ (論創海外ミステリ)紺碧海岸のメグレ (論創海外ミステリ)感想
フランスミステリは、ショッキングな殺人シーンとサスペンス性が強い印象だが、メグレ警視シリーズは静かな作品イメージを個人的に持つ。本作はメグレ警視が紺碧海岸(コートダジュール)での殺人を追う。栄華と退廃という人間の表と裏を、少ない登場人物と風景描写で見事に描き切っている。事件に強いスポットを当てていないが、海岸線の寂れたバーの女2人の心情を通すことで、犯人が殺人に至る刹那さを引き立ているのだ。上層部からは「波風を立てるな」と念を押されていることもあり、メグレの内に向く感情の描写も読みどころのひとつである。
読了日:3月9日 著者:ジョルジュシムノン

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