感想

斬首人の復讐 (文春文庫)

斬首人の復讐 (文春文庫)

雪深い山中で次々発見される首なし死体。一方、市内でも被害者を斬首、その首を警察に送りつける事件が発生した。<刎刑吏>と<斬首人>、カナダ全土を脅かす二人の殺人鬼をつなぐものとは・・・。
壮絶な迫力、波乱万丈の展開、姿を現す意外な犯人たち。J・ディーヴァー級の連続驚愕で圧倒するジェットコースターミステリ。


スレイドらしからぬ薀蓄の嵐。「髑髏島の惨劇」「暗黒大陸の悪霊」でも、薀蓄の披露はしてきたものの、いままでとは比べ物にならないほど。量もさることながら、質にも驚かされる。
犯罪心理学と異常性愛。さすがはスレイド。薀蓄ひとつとってしても一筋縄ではいかない。


ネイティブカナディアンの反乱から幕を開ける。戦争さながらの戦闘シーンで発見される、首なし死体。その首なし死体の発見に触発されたかのごとく、ディクラーク宛に届けられる縮められた人間の頭。
10年前に決着が着いたと思われた「斬首人」が見え隠れする中、北方の森の中では、狩りでもされたかのような殺され方をした、首なし死体が次々と見つかっていく。街中でも、「斬首人」の手口に似た殺され方をした首なし死体が見つかり始める。
この三つの事件をスマートに平行させ、最後に綺麗に纏め上げる。犯人はスレイドお得意のフィニッシュストロークがドンぴしゃり。最後の最後まで目が離せないのである。


お馴染みのレギュラー陣も健在で、今回の主役はデビュー作「ヘッドハンター」以来となる、ディクラーク警視正。ディクラークを主役に据えたからなのだろうが、心理的な部分から犯人へアプローチを仕掛ける。スレイドには珍しいサイコスリラー調に仕上がっているのも、この作品の特徴のひとつでもある。
ディクラーク以外のキャラクターも、まんべんなく、かっこよく書かれている。

パンクっぽさは健在なのだが、今までのスレイドの作品とどこかが違う。違和感というよりも、進歩を感じる作品なのだ。


デビュー作「ヘッドハンター」の続編、ポジションとしては完結編になるのであろう。
あの、座り心地の悪い終わり方をした「ヘッドハンター」をここまで綺麗に纏め上げるとは・・・。
「ヘッドハンター」は創元推理文庫で復刊が決まったので、未読の方は是非「ヘッドハンター」を読んでから、この作品に着手することをお薦めする。
「斬首人の復讐」単独で読んでも楽しむことはできるが、やはり「ヘッドハンター」を読んでいるのと、いないのとでは倍以上に楽しみ方が違うのだ。