感想

夜 (角川ホラー文庫)

夜 (角川ホラー文庫)

感想はのちほど。こちら。

突如襲った激しい大地震。住民が「町」と呼んでいる新興住宅地の道路が遮断され、十五軒の家が完全に孤立した。
日が暮れ、月も星もない完全な闇が町を支配する。閉鎖された極限状況の中で、人々の精神は少しずつ狂いはじめた。その闇の中で、人間ではない何かが人々を狙っている。一人、また一人、犠牲者が・・・。
人間の恐怖、狂乱、そして死を、サスペンス色豊かに描くパニック小説の傑作。

恐怖を煽る閉鎖空間を生み出したシチュエーションの設定は見事。夜という心理的不安を煽る時間設定も見事。得体の知れない何かが襲ってくる緊張感も見事。
ただ、心の底から恐怖を味わいきれなかった。
この手のホラー物を体験しすぎているのも原因なのかもしれないが。
この作品を読んでいて、すぐに思い浮かべたのは「レリック」という映画。シカゴ博物館に潜む、何かが人々の首を刈っていくのである。原作は扶桑社文庫から上下組みで刊行されている。読み比べてみるのも面白いかもしれない。

怪物と戦うホラーのパターンとして3つに分類できると考えている。
①最後まで相手がわからず(姿が見えないものも含む)奇跡的に逆転勝ちするもの。
例えば先ほど挙げた「レリック」とか、「エイリアン」(もちろん第1作目のみ)とか、「13日の金曜日」(これも第1作目のみ)が該当する。
②最初は相手がわからず、途中で正体が判明して反撃に転じながら、最後まで決定打が出ずにハラハラさせられるもの。
これには「JAWS」(ホラーかなぁ??)や、「ミミック」、ゲテモノ系で「ネスト」などが当てはまる。
③最初から相手が分かっていながら、最後まで戦い続けるもの。
これは「エルム街の悪夢」や「死霊のはらわた」、「ポルターガイスト」などの悪霊系(フレディーは悪霊とはちょっと違うか・・・)、「グリズリーズ」、「アナコンダ」など自然の動物相手ものが多かったりする。

映画におけるホラー考について、ここでは深く語っても感想にはならないので、このあたりで剣を収めよう。
「夜」は①に該当している。
最後の最後まで「何か」の正体は書かれていない。正体を書かないことで読後に恐怖感を持続させようとする狙いがあるのかも知れないが。
キャラクターや会話で、恐怖が和らいでしまうことも否定はしないが、怖い小説であることは間違いない。

それにしても、赤川次郎がこの手のホラーを書いていたなんて、まったくもって勉強不足でした。