感想
- 作者: マイクル・コナリー,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/09/15
- メディア: 文庫
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(上巻)
ハリウッド署の刑事を退職し、私立探偵となったボッシュには、どうしても心残りな未解決事件があった。
ある若い女性の殺人と、その捜査中目の前で映画のロケ現場から奪われた200万ドル強盗。独自に捜査することを決心した途端にかかる大きな圧力、妨害・・・。
事件の裏にはいったい何が隠されているのか?
(下巻)
ロス市警のみならず、FBIからも激しい妨害と警告を受けるボッシュ。
孤独な捜査を進める彼に貴重なヒントを与えてくれたのは、今は全身不随の身となった元刑事のクロスだった。が、その身辺にも危機がせまり・・・。
たくさんのもつれた糸が絡み合い、人の闇を炙り出す。
ハリー・ボッシュのシリーズも今作で9作目を数える。
それでも、ボッシュの魅力に陰りは見えない。
警察を早期退職し、私立探偵として再スタートしたボッシュ。警察官時代に解決できなかったある殺人事件。私立探偵としてのスタートをその殺人事件に決めたものの、捜査を始めた途端に、元同僚のキズミンから横槍が入る。
さらにはFBIの妨害さえも受けることになるが、これがボッシュの心に火を付けるのだ。
こんな状況下で、熱くまっすぐな男、ボッシュは本領発揮。
シリーズ中のキャラクターも健在。元妻のエレノアとの微妙な距離は縮まりそうで、縮まらないが、最後あっと言う展開が用意されている。
殺人事件と映画のセットに使用された大金の強奪。さらにはFBIが噛んでいるテロリストと金の関係。
この3つの要素が、自然と絡み合うこと、またFBIが執拗にボッシュの捜査を止めさせようとすること、物語の土台を形成するこれらから、謎が生まれ、ボッシュの地道な捜査が謎をゆっくりと解き明かしていく。
終盤の銃撃戦を境にはっきりと真相が見えてくる展開は、読者を飽きさせることはない。
解き明かされた真相は許しがたいものだが、すでに犯した罪の分だけの報いを受けている人間に、コナリーが救いの手をさしだしてさえ居るように感じるのだ。
ある女性が作中で口ずさむ、ルイ.アームストロングの「この素晴らしき世界」を聞いた時、涙さえ浮かべられるのである。
今、LAを舞台にハードボイルドを書かせたら、コナリーの右に出るものはいないのではないだろうか。
そう思わせるくらいに完成度の高い作品であることは間違いない。シリーズ中でも3本の指にいれても何ら問題はない。